2026年 いまどきの中学受験事情を考える ーMちゃんの場合ー
2025年10月に入ってすぐのこと、私共のもとに当時小6のMちゃんのお母様からメールが入りました。
―立命館宇治中学校IPコースの自己推薦が取れました!11月末に面接、エッセイと算数のテスト、12月5日に合格発表となります―
それはMちゃんにとってたいへんな第一関門の突破であり、IPコースという特別なコースへの登竜門であり、私共にとっては最高にうれしい第一報だったのです。そこから満を持しての受験、そして12月5日、とうとう合格発表の日。
―無事にIPコースで合格できました!―
とお母様からのメールが。Mちゃんにとって念願の立命館宇治中学校IPコースへの入学が決定した瞬間でした。
ハワイと日本を行き来した幼少期
さて、遡ること約1年半前の2024年秋、Mちゃんは当時小学5年生、お母様と一緒に初めてイングリッシュ・マスターズに来てくれました。
彼女はハワイ生まれ、物心つく前から「英語を将来の味方につけて人生の道幅を広げてほしい」と思う親御様の願いがあって、幼少期は生活の拠点をハワイ中心にしておられたため、彼女はハワイと日本を行ったり来たりしながらぐんぐん成長していきました。この頃は英語と日本語が同じ線上に並ぶほどの会話ツールになっていたそうです。
転機が訪れたのは日本での小学校生活が始まった時。同時期にあのコロナ禍の数年が重なってしまったのです。長期休暇はハワイで過ごし、現地校に通って読み書きを本格的にスタートさせたいと計画を立てておられたのに。
順調に進むはずだった英語学習、毎年のように積み上げていた春休みや夏休み留学での語学研修ができなくなったことで、当時お母様の目にはMちゃんの英語力の進化にブレーキがかかってきたように見えたそうです。
帰国子女サポートと英語維持への模索
お母様は、彼女が現状の環境で物理的に減ってしまった日々の英語量を維持する方法を模索して、帰国子女のためのサポートプログラムを持つ機関をチェックし、まず大阪YMCAのサタデープログラムに2年、JOESのオンラインクラスにも2度に分けて在籍、小3からは同志社国際中・高が運営するDIVE、その後は立命館宇治中・高が運営するRits Kidsを選び、通わせておられました。
なおかつ彼女の性格を考えて、受験塾型の詰込み学習はあえて避けて、ビデオゲームを英語教材に活用したユニークなオンライン授業での英語学習+英検®学習を並行してしっかり取り入れておられました。
しかしながらお母様によると、Mちゃんは物心つく前から日常の一つとして当たり前に自分の身近にあった英語に対して「好き」といったような感覚がなかったそうで、その英語力を維持、伸長していく事は至難の業だったと振り返ってお話されています。
IPコース受験と英検®準1級
今回Mちゃんが目指したハイレベルなインターナショナル系中学校、しかもIPコースのようなアドバンスコースへの受験を考えた場合、英語での筆記試験対策、小論文対策、英語で算数試験の対策など、卓越した英語力は欠かせない条件となります。
そして、同じジャンルでも学校によって独自の必要項目があったりしますし、採点基準も違いますが、英検®に関しては2級レベルの取得はほぼ必須と捉えられており、そしてより有利な条件で受験することを考えると、※準1級の獲得はやはり無視できない大きな存在となりつつあります。
※英検協会が定める英検®準1級の平均的な対象者は「大学中級程度」「CEFR B2」レベルです。
小6で準1級に合格できるお子様は、完全に「突き抜けている層」であり、だいたいこういう状態と言われています。
- ニュースや社会問題(環境・教育など)を英語で理解できる
- 英語で自分の意見を論理的に説明できる
- 語彙が高校〜大学レベル(7,000語以上)
- 英語を「勉強科目」じゃなく言語として使えている
Mちゃんのように、海外生活が長く、日常語としての英語を聞いたり話したり読んだりする機会がたっぷりあったお子様たちの強みは圧倒的なリスニング力です。そして準1級の一次試験の中でも重要な得点源になります。これがたいへん有利な点です。
ただ、彼女がいくら日本語と同じように英語でモノゴトを考える事ができるとしても、しょせんは小学生です。大学3回生レベルの思考力で社会問題や時事問題を語れるのか、というところが、毎度この中学受験に準1級テスト利用を検討される方たちに対して、共通の大きなハードルになってきます。
更に追い打ちをかけてきたのが、協会による各級のグレードアップ。この時期での変更としては2024年6月実施の第1回検定から準1級に新たに要約問題が追加されました。ライティングセクションに新たな問題形式として登場しています。
従来からの「意見論述問題」に加えて、英語の総合的な運用力がより重視される形式へとリニューアルされた形です。この手の問題の追加は、さらに難しさを押し上げることになりました。
元々お母様の計画では「英検®準1級合格」という難攻不落の最高目標を小学5年生の間に、というお考えだったそうです。しかしながら、どうしても暗記中心の、杓子定規になりがちな学習を強いられる毎日、「仮定法過去完了」みたいなちんぷんかんぷんの文法用語が飛び交う教材、彼女の性格には全然合っていない、どこか突破口となって教えてくれるところはないのか、と心配して連れてこられたのが当校でした。
Mちゃんは、英語の勉強なのに日本語で文法用語を説明されたりするスクールは絶対ムリ!という事だったので、関西では選択肢が少なく適当な学校を探すのに苦労しておられたそうです。
一方、私共では数年前からこの手の依頼を引き受けることが少しずつ多くなってきていました。
まず小学生にとってはなかなか越えられない高いハードルの部分、大学生並みの語彙力を身につけて自分の意見を語る、というハードル。ここを攻略するためには、最初の関門の7,000語と言われている単語量、小学生には日本語ででも意味が分からないようなコトバをひたすら覚えてもらわないといけません。
これについてはこちらも祈るような気持ちで「次までにこれだけは覚えてきてね-」と宿題に出して様子を見ていました。これはそう簡単に行きません。「今週はできなかったー」が続いたり、復習すると全く頭に入ってなかったり。生活に関係ないコトバは頭に入らないのは年齢にかかわらず皆同じです。一方ご家庭では、
- CNN10などの海外ニュースを一緒に見る
- 英語で世の中の話題を知る
- 意見を交換する
を親子で一緒にやってくださっていたそうです。それは本当にスクールだけの学習では事足りないこの部分の大きな助け舟になりました。
次に作文力。こちらはとにかく書いてもらう、最初のうちはただ書いていた文章を、まず長く作れるように様々なテクニックを教えます。散文のような形態から起承転結のある文章へ、単文の羅列から複合文が使えるように、それらを添削することで文法的な間違いを正し、表現のテクニックを身につけてもらうようにします。文字数を意識して体裁を整えることも必要です。
そして、長文を要約する力をつける。一次試験では要約問題として出るのですが、要約する力をつけることで二次試験のスピーキングのところでも簡潔に自分の考えを作るのに役立ちます。
この辺りの、「Mちゃんが好きじゃないこと」を講師達はひたすら、彼女が理解できる言葉を使って教えました。もちろん、あんまり楽しくない勉強です。でも、彼女は何とかがんばって取り組んでくれました。
なぜなら立宇治IPコースへの受験は彼女自身が選んだ道だったから。お母様は彼女には「自分で行きたいって言ったんだからやりなよ。嫌ならやめれば?」というスタンスに徹していた、とのことです。
実は、Mちゃんは小学校生活でもスーパーマンみたいに忙しい毎日を送っていました。
たとえば生徒会活動。5年生の時に自ら立候補して副会長職をゲットして大活躍でしたし、6年生になると自分から発案して先生に掛け合って任せてもらった週1のお昼休憩の時間の放送部活動、賛同してくれるメンバーを募ってFMラジオのDJみたいに生徒たちのリクエストを集めて選曲して流したり、学校の先生にインタビューしてそれを発表したり、自分が面白い、やってみたいと思うことを形にしていく彼女は学校中の人気者だったと思います。
タレント並みに超多忙な生活の中で、英語の勉強は地道にまじめにコツコツと積み上げていかなければなりません。しかも大学3年生のレベルの学習です。学校からお母様に送ってもらって当校に飛び込んできて学習。学校での疲れが出て思わず瞼が下がってきて、気がつけば寝てしまうことも。
でも日を追うごとに少しずつ、彼女の理解力が上がっていき、ずいぶん文章力が付いてきていると担当の先生達も実感するようになってきました。
2025年4月、英検®準1級合格
こんな毎日を続けて、月日は流れ-。
2025年4月にMちゃんはS-CBTで英検®準1級を受験、そしてとうとう見事に合格されたのです!これはもう、秘策はありません。毎日の単語暗記や作文の練習、長文の読み慣らし、ネイティブ講師とのスピーキング練習、時事問題のディスカッション、全ての地道な努力が実を結んだ成果です。正直、私達はもう少し時間がかかる、と思っていましたのでこの吉報は本当にうれしかったです。
2026.5 記

そして、この英検®準1級合格を志願書にプラスすることで、Mちゃんは今まで積み上げてきた様々な志願書の条件をさらに強固なものとし、立命館宇治中学校の「国際自己推薦入試」枠を獲得し―IP方式で受験した結果、念願の合格を勝ち取ることができました。長い道のりの中の一つ一つの節目に成功があり、その成功の積み重ねで彼女の中学受験は目標通りのゴールに無事たどり着くことができたのでした。
受験を支えたご家族の力
中学受験はその難関を志した一人ひとりの小学6年生にそれぞれのドラマがあります。成功して念願の学校に入学する事ができた人がいれば、うまく行かず涙をのむ人もいます。
ただでさえ合否を分ける受験へのチャレンジはお子様方にとって心身ともにたいへんなストレスです。他の同い年の子達が流行りの遊びに夢中になっている放課後、彼らはお父さんやお母さんに送迎してもらいながら、毎日違うスケジュールで学習塾や私共のような英語スクールなどをハシゴしたりして必死にその日のノルマをこなしていかなければなりません。
さぞかし面倒くさくて憂鬱で楽しくない時間を過ごされたことと思います。
でも、私共はこの戦いの本当の当事者は親御様ではないかと思うときがあります。
ごく少数のお子さまを除いて、大多数の受験者の皆さんは、はじめからここまでしんどいことと想像することはできないはずです。
でも彼らのくじけそうな思いを奮い立たせてでも親御様方が一生懸命に彼らの背中を押すのは、成功したときの、その後の人生の可能性にたいへんな差が出ることを実際に体感して来られたからだと思います。だからこそ、親御様が先導してのマネージメントや緩急取り混ぜた手厚いサポートはお子様に必要不可欠なものになります。短くても2年~3年はこの生活を強いられることになるのですから。
Mちゃんの場合は、お母様が彼女のONとOFFの切り換えを上手に作っておられたな、と思います。ONのときは彼女が自分の決めたことは妥協せずやり切るように、うまく誘導。そしてOFFのときを忙しくてもちゃんと作って、常に一緒にたのしい時間をたっぷり共有しておられました。

最後に
私共がMちゃんと接していて、この受験勉強期間中にあんまり悲壮感を感じていないように見えたのも、持ち前の何でもやってみたい精神を誰かに抑え込まれることなく解放して、学校やアフタースクールの活動の中で常に彼女自身が楽しめる空間を創造することができたからなのだろうと思います。きっと彼女の「受験生活」をお母様がうまく演出されていたからなのでしょうね。
さて、Mちゃんは中学校進学とともに通学コースが遠くなってしまい、当校での英語レッスンは残念ながら卒業となりました。本音を言えばこれから中学・高校と成長されてそのユニークな個性に磨きがかかっていく彼女を傍で見ていたかったのですが—-
時おりお母様からのニュースレターを期待することにして、この奈良の地より、Mちゃんのますますのご活躍を願っております。
